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2009年8月号
vol.691
【家畜衛生】
牛白血病について
島根県東部農林振興センター出雲家畜衛生部(出雲家畜保健衛生所)
獣医師 森脇幸子
牛白血病とは
牛白血病は、家畜伝染病予防法に基づく届出伝染病の一つです。発生の様態により、地方病型(成牛型)と散発型(子牛型、胸腺型、皮膚型)に分類されますが、経済的損失が大きく問題となるのは、主に地方病型白血病です。地方病型牛白血病は牛白血病ウイルス(BLV)感染によって起こる疾病で、BLVに感染した牛の多くは無症状ですが、感染牛の約30%は血液中のリンパ球が増加した状態である持続性リンパ球増多症を示します。数ヶ月~数年の期間を経て、持続性リンパ球増多症であるかに因らず感染牛の1%以下が発症します。発症牛では、リンパ節の腫大、頚部の膨張、まれに眼球突出がみられ、末梢血中には異型リンパ球が認められ、発症牛は予後不良となります。
| 病型 | 至適年齢 | 発生 | BLV関与 |
| 地方病型(成牛型) | 3歳以上 | 地方病型 | 有り |
| 子牛型 | 6ヶ月以下 | 散発型 | なし |
| 胸腺型 | 2歳以下 | 散発型 | なし |
| 皮膚型 | 2~4歳 | 散発型 | 不明 |
近年の感染状況
近年、牛白血病の発生数やと畜場での牛白血病摘発数は全国的に増加しており、2007年に実施された全国的なBLV抗体調査では、平均抗体陽性率は28%(乳用牛35%、肉用牛12%)であり、1982年と比較して高い抗体陽性率であることが明らかになりました。
BLVの感染が成立してBLV抗体ができても、ウイルスは排除されずに共存するため、抗体の検出はすなわち感染が継続していることを意味します。
感染要因とその対策について

牛白血病の感染は水平感染や垂直感染によって広がります。水平感染には人為的感染、吸血昆虫による感染、同居感染、経乳感染などがあり、垂直感染には子宮内感染、産道感染などがありますが、牛白血病は主に水平感染によって広がると考えられています。
牛白血病の原則的な予防法は感染牛の摘発・淘汰ですが、陽性牛が多い農家では、それぞれの感染要因について対策を行えば感染拡大を防ぎ、陽性牛を少なくしていくことができます。なお、持続性リンパ球増多症の牛はBLV感染細胞を多く含むため、感染源となる可能性が大きくなるため注意が必要です。
水平感染: 同居家畜間で様々な形の接触により伝播する感染経路
人為的感染:
直検手袋や注射器など器具の連続使用や出血を伴う作業による感染で、約1μlの血液で感染が成立します。対策としては、直検手袋・注射針などを使い回すことを禁止し、出血を伴う作業の際の洗浄・消毒を徹底します。
| 感染の危険性 | 処置 |
| 高 | 輸血 汚染注射器具 |
| 中 | 直検(妊娠鑑定)を同一手袋で実施 外科処置(除角など)を同一器具で実施 |
| 低 | イヤータグ 吸血昆虫による伝播 |
| ほとんどない | 人工授精 受精卵移植 |
吸血昆虫による感染:
アブなどの吸血による感染で、放牧場での主な感染要因と考えられています。対策としては、農場内では吸血昆虫の駆除を行い、放牧場では感染牛を放牧しないことでまん延防止を行います。
同居感染:
舐め合い等による鼻汁や唾液を介した感染ですが、感染率はそれほど高くありません。対策としては、感染牛と非感染牛を隔離することで、感染する機会を減らすことができます。
乳汁感染:
出生後数日間の乳汁を介した感染です。感染牛の初乳中にはBLV感染細胞とBLV抗体の両方が存在するため感染率は低いですが、初乳をプールした場合の感染率は高くなると考えられています。対策としては、陽性牛の初乳を処理(60℃30分の加温処理)して与えることで感染を予防することができます。処理していない場合は、陽性牛の初乳を与えないようにしましょう。
垂直感染: 親から子へと、母子間の伝播による感染経路
子宮内感染・産道感染:
出生前に感染が起こり、初乳給与の前にBLV抗体が陽性となります。対策としては、陽性牛から生まれてくる子牛は出生前感染している可能性があるため、牛群の清浄化を進めることが大切です。
現在、牛白血病に対する有効な治療法はありません。また、感染しても症状がほとんど無いため、その後長期間に渡り感染牛は感染源となり、知らない間に感染が広まってしまう病気です。しかし日常作業の中で対策をしっかり行えば、必ず感染拡大を防ぐことができます。発生頭数の増加が続いている現在、関係者が一体となり地域ぐるみで清浄化に取り組んでいくことが必要だと思われます。