トップページ > 島根の畜産 > 2009年8月号 > 飼料米を活用した「しまね和牛肉」生産技術の開発
2009年8月号
vol.691
【調査研究】
飼料米を活用した「しまね和牛肉」生産技術の開発
島根県畜産技術センター 肉用牛グループ 科長 土江 博
1 ねらい
世界的な穀物価格の高騰に伴い、輸入穀物飼料に依存する和牛肥育経営では、輸入穀物飼料に代わる飼料の確保が喫緊の課題です。一方、米消費の減少や水田転作面積の増加により、水田営農での有望転作作目として飼料米が注目されており、超多収品種及び栽培技術の開発により安定的に確保できる見通しとなっています。
本県では、「新たな農林水産業・農山漁村活性化計画(平成20年3月策定)」の中で、しまね和牛の生産拡大と共に新規需要米生産を主要施策に掲げ、平成20年度から「飼料米生産定着化モデル事業」の実施により、飼料米の生産及び養鶏農家での給与実証試験を開始しました。そこで、今回飼料米の加工及び給与技術等の開発による「しまね和牛肉」の生産技術について紹介します。
2 研究方法
次のような内容で研究を進める計画です。なお、この研究は、(国)島根大学、県産業技術センター、民間企業と共同で実施するものです。
1)飼料米加工技術の開発(H21~22年度)
(1) 高温・高圧技術の検討
(2) 最適利用形態(ペレット、フレーク、粒等)の検討
(3) 既存処理技術(粉砕等)との比較
2)飼料米の有効性の検討(H21~23年度)
(1) 肥育成績の調査
(2) 嗜好性、消化率、栄養価の調査
(3) 既存処理技術との比較
3)飼料米の最適栄養管理技術の開発(H21~23年度)
(1) マニュアルの作成
(2) 濃厚飼料代替割合の検討
4)加工飼料米の製造・流通の検討(H21~H23年度)
3 研究の活用
1)高温・高圧処理加工技術の開発により、肥育牛に利用しやすい形態となることが期待でき、肥育農家に安定的(量・質)に供給が可能となります。
2)飼料米給与による消化率、嗜好性、肉質等の検証により、最適栄養管理技術の開発及び体系のマニュアル化を図り、飼料米の普及・利用を通し、飼料米栽培面積の拡大が期待できます。
3)肉の旨味、柔らかさ、芳香性が高まり、肉質の向上並びに枝肉単価のアップ及び新たなブランド肉生産が期待できます。
4 研究の進捗状況
1)給与試験牛および試験区分の概要
(1) 試験牛の概要
受精卵移植により誕生した全兄弟(父:花冨桜)の去勢牛4頭を供試し、生後8か月齢(昨年12月)から給与試験を開始しました。
(2) 試験区分
試験区1として、肥育開始(生後8か月齢)から出荷(生後28か月齢)まで、給与濃厚飼料の25%を代替した飼料を給与(飼料米1号牛、飼料米2号牛)、試験区2として、生後月齢20か月齢から出荷(生後28か月齢)まで同様な飼料を給与(飼料米3号牛、飼料米4号牛)設定しました。
2)給与試験の内容
(1) 飼料米の給与形態
飼料米は、もみ付き玄米のまま粉砕し、籾もそのまま給与しております。粉砕は、古い麦砕機を利用し、完全に「粉」と言うことではなく、籾は形が分かる程度、玄米は細粒程度としています。(写真1、2)

(2)濃厚飼料代替割合と嗜好性
給与濃厚飼料の25%を代替し肥育開始当初から給与していますが、嗜好性は問題なく、これまで給与していた濃厚飼料と遜色なく採食しています。(写真3)
3)発育状況
4頭の増体の推移を図1に示しました。生後16か月齢時点では、目標体重を上回る推移をしており、試験区1は約10.3㎏/1頭/1日採食しています。両区とも健康状況は、外貌上や血液検査の上からも特に問題は認められていません。

5 今後の計画
今年度は、飼料米の加工について共同研究機関と検討を行い、秋には、加工した飼料米の給与試験を給与濃厚飼料の50%以上に設定し開始予定です。
6 まとめ
飼料米の肥育牛への給与試験は、20年前に現在と同じような経済状況で全国的に実施されましたが、結局牛用の飼料としては流通することは無かったようです。しかし、現在では、世界的な食糧不足という「飼料」そのものが確保できるかという根本的な課題に直面しており、飼料米が「トウモロコシの代替」や「濃厚飼料の代替」という代打の役割に甘んじることなく、国内で賄うことが出来る「唯一の穀物」として定着するような研究成果と普及が今後重要と考えます。